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オオカミの生き方 | ウィリアム・J・ロング

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Illustrated by Charles Livingston Bull

ハイイロオオカミを追って
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 そのあたりで湖は幅を狭めていて、それが口を閉じる手前のところで、オオカミは雄ジカにたやすく迫り、位置を確保した。獲物を弾き倒すのに、何の苦労もなかった。離れたところから見ていたわたしは、2匹は遊んでいるのではないか思った。騒ぐことなく静かに走り、たびたび雄ジカは自分を追うものは何かと、振り返っていた。

 

 雄ジカが急停止するたびに、追っ手も足を止めた。そして一瞬の間、雄ジカは相手を注視し、きびすを返して走り出した。オオカミはそれをチャンスと見て、閃光のように飛び込んだ。もし彼が膝腱(ハムストリング)を切ろうとしたか、大腿動脈を開こうとしていたのなら(熟練したオオカミの後ろからの攻撃法)、明らかに失敗だった。

 

 すぐにオオカミは2度目の挑戦をした。今度は雄ジカの片足を捉え、雄ジカの頭と肩をひねって投げつけた。雄ジカはもんどり打って倒れたが、あっという間に立ち上がった。雄ジカは追っ手の方を振り返り、素早くからだを立て直してオオカミに突進し、前足で強打してきた。雄ジカが襲ってきても、オオカミは飛んで逃れた。そして獲物のまわりをぐるりと回ったあと、用心深くその場にしゃがんで足を折りたたんだ。鼻を鳴らし足を踏み鳴らすものの、逃げるなり挑むなりしてことを終わりにしようとしない雄ジカの動きを、オオカミはじっと見つめた。

 

 離れたところからは、雄ジカは放心状態に陥っていて、自分の命のために戦っているというより、空想にふけっているかのように振舞っていた。雄ジカはそうしているのに疲れて、向きを変えると軽快に走りだし、また襲われて同じように投げ出された。オオカミは雄ジカを追い詰めると、獲物に飛びつき、腎臓のところに噛みついた。このひと噛みによって、狩りは終了した。これで終わり、わたしが稲妻のような動きを理解する前に、オオカミは立ち上がり一歩下がった。あとで確認すると、雄ジカは背中を損傷していた。おそらく雄ジカは麻痺状態にあったのではないか。ほとんど抵抗することなく、氷の上に横たわって死んだ。雄ジカが息をしなくなる前に、オオカミは喉を開き、雪をちょっと舐めたように見えた。そして頭をあげると、特徴的な遠吠えをし、前足を投げ出し、番犬のように耳を立て、静かに獲物のそばでからだを伸ばした。

 

 すべてが予想外で、想像していたどう猛さから大きく外れた行動だったので、わたしは湖岸の木の陰からオオカミをじっと見つめ、どういうことかと考えあぐねていた。

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 湖の向こうで突然の動きがあり、森の中から8頭のオオカミが現れ、影のように静かにこちらに走ってきた。オオカミたちは獲物のところに集まると、1、2度そのまわりを歩き、それから食べ始めた。雄ジカをしとめた雄オオカミがテーブルに付くまでは、ガツガツするようなことはなく、まるで平和で静かな朝食の風景のようにわたしには見えた。ときに腹の減ったオオカミたちの食べながらの低いうなり声を耳にしたとしても、争いごとは一切なく、分け前を前にした喧嘩もなかった。面白いことに、彼らはみんな獲物の同じ部位(もも肉の上部および後部)を食べており、その他の部分は触れることがなかった。お腹がいっぱいになると、長く走ったあとの猟犬のように氷の上を転げまわる者があり、また子どものオオカミは2匹で取っ組み合いに興じていた。

 

 それから仲間の中で大きなオオカミ2頭が立ち去るのを追って、群れは湖の岸辺の方へと去っていった。そしてこの道を通るお腹のすいたオオカミに、この先に食料がたくさんあることを告げるため、道すじの切り株に「印」を残していった。

 

 これがシンリンオオカミの真実だ。用心深くて素晴らしく知性的な生きもので、10回の内9回は人の裏をかき、人間が想像するのと正反対の姿を見せて驚かせる。おそらく北部の野生動物の中でも最も臆病で、仲良くなるのが非常に難しい生きものだ。またその野生のために、その生き方はほとんど知られていない。しかしオオカミの巣穴や仕留めた獲物をよく見れば、あるいは彼らの通り道のそばで待ったり、雪に残された足跡の記録を来る日も来る日も追いかければ、最後にはオオカミについて確かなことが学べるはずだ。まず最初に記すべきことはこれだ。マルサン(オオカミ)の習性が、どう猛にして邪悪だという風評には何の根拠もない、ということ。

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