DISPOSABLE PEOPLE
ディスポ人間
第10章
ミスター・ラブレイス様
ぼくの死はそこにあり
使者が急ぎに急いで近づいてくるのが見える
ジャーナル様
ぼくの話をあなたにしたい
だから死を少し延期してくれないかな?
ぼくは野獣だ
いつもそうだったし、これからもそうだ
嗅覚で生きてる
嗅ぐのが好きだ
女性のドレスの下の臭いが
相手を選ぶために
だれが熟れてるか探し
その女の胸をなめる
犬がミルクをなめるように
これがぼくだ
母親の欠如か、それとも給料、あるいは魂の欠如?
ジャーナルの記述(1999年ごろ)
ドレッタ・カーペンターは2002年に47歳だった。したたかで、馬鹿げたことなど言わないジャマイカ女で、きつい香水を振りかけるように目的意識をまとっていた。当時学校の教師で、熱心な働きぶりに対して政府が払うわずかばかりの給料を手に、怒りをなんとか押さえている状態だった。家庭教師をすることで、収入の足しにしていた。どうにか普通の生活を送ることに関する主たる障害:給料、子ども時代の貧困経験、月面からでも認識できる右目下のいぼ、4人の子どものうちの3人。
セント・キャサリン教区の丘に生まれ、7人兄弟の上から2番目の子どもだった。最初の子ミルドレッドは注目度一番で、残りの子どもたちを完璧に置き去りにした。ジャマイカ史上最高のどう猛なハリケーンと同じ年に生まれたからだった。
「ハリケーン・チャーリーの一撃がこの子を連れてきた」 人々は姉のミルドレッドのことをいつもそう言っていた。
1951年、ハリケーン・チャーリーは25000軒の家の屋根を吹き飛ばし、154人の魂を連れ去った。キングストン、セント・アンドリュー教区、セント・キャサリン教区、セント・トーマス教区は最も打撃を受けた地域だった。ミルドレッドは嵐の3日後に生まれたのだが、道路は倒木や押し寄せたいろんな物の残骸で封鎖されたままだった。助産婦がミルドレッドの誕生に立ち会うことはなかった。実際の話、完全に嵐に振りまわされ、子どもが生まれたこと自体、気づかれないほどだった。人々はコーヒーを入れるためにお湯を沸かしたり、嵐で死んだ動物の肉を調理したり、生き残った鶏の世話をしたりで忙しかったので、口にするのは嵐のひどさのことばかり、そしてこれは神の報復かという話題でもちきりだった。しかし嵐の物珍しさが去ると、人々は生まれた子どもに注意を向け、これは嵐の子だねと愛に満ちた視線を送った。
ドレッタはといえば、「最初の子」でも「末っ子」でもなく、「一人きりの男の子」でもなかった。そのため彼女は生きている間、ほとんど誰からも注目を浴びることがなかった。
ドレッタは自分で自分に注目するしかなかった。
自分の子どもに加えて、嫌味で、悪意ある計算高い猫を飼っていて、ほんとの名前はアミーナだったけど、子どもたちはこの猫を「失調」(「総合失調症」の略)と呼んでいた。失調と呼ばれているのは、誇張というわけでもなかった。ところでドレッタがこの猫を飼いはじめて3年たったとき、一番上の娘のレベッカがアメリカから帰ってきた。それで猫は、みんなが思っていたメスではなくオスだったとわかった。
ある日の猫の「失調」
ドレッタは犬も飼っていた。この犬はもとは猫の失調と同じように野良で、ドレッタは庭で飼う価値があると心が決まるまでは、家のそばに餌を置いて様子をみていた。犬はいま、キングストンのハグヘンデンにあるドレッタの家の平屋根の上に住んでいる。ドレッタは2階をつくろうかと考えたことがあって、職人が間に合わせの階段を家の裏につけた。これが屋根への犬の通り道となった。
2002年2月、ドレッタは4番目の内縁の夫に出ていってくれないかと丁寧に頼み、再び独り者になった。この最後の夫は、みんなが思うに、世界でただ一人のドレッタと本気で結婚しようとした男で、それはそいつの「粘着質」のせいだった。しかしドレッタは、この男が思っていることを口にするのも節約するような、たいしたケチだとみなした。他の3人と同様、ドレッタは男の愛嬌や気づかいや優しい言葉にだまされていたのだ。精神科医ならこう言うかもしれない。男たちはドレッタに、両親が与えなかったものをもたらしていた、と。
10代のとき、ドレッタは深刻なホルモン失調に陥った。そのことで同情されることはなかったが、ドレッタのパパはこの地獄地区に最高のサトウキビを植え、ばあさんは炒るところから作った自家製の美味しいホットチョコレートに加えて、サツマイモのプディング菓子までつくってやり、ティーンエイジャーの女の子は即座に年上の男の子たちのことは忘れた。
2002年2月、ドレッタが沸騰するような暑さの家の中で、ソファに座っているのが見えた。ドレッタの家の居間には三つの扇風機があり、狂信的な置き方をしていた。三か所の隅に扇風機を据え、部屋の中央に向ける。そして燃えるような暑さの現実とそこからの一瞬の逃避の両方を味わうのだ。
ここからはドレッタ自身の声に切り替えようと思う。というのも、ぼくの一生、生涯すべての間に、彼女のような人間は他に見たことがないからだ。だから彼女自身にしゃべらせたいと思う。
ドレッタ・カーペンターのある1日
わたしは怠けもんのクソガキの部屋に入っていった。クソガキは寝そべって、天井を見上げていた。神様が与えてくれる毎日をこうして過ごしてる。寝っ転がって天井と壁を何時間でも見ている。わたしはクソガキに訊いた。
「いったい何やってんの? トニー」
するとこう答えた。「ママ、自分を容れ物みたいだと感じてる」 なんでこれまでにわたしがこのクソガキを殺してないか、神様だけがご存知だ。受難と辛苦以外のなにものでもない!
わたしは訊ねる。「何をいれる容れ物なの?」
息子は言う。「音楽だよ、ママ。ぼくは音楽をいれる容れ物なんだ。音楽はぼくを通過していく」 このクソガキは運がいい。昨夜からわたしは修士号取得のため、ガンジーについての本を読みはじめたんだから。非暴力についての神様とガンジーの教えがあって、このクソガキは生き長らえている。自分が得た恩恵を数えて、一つ一つ口に出してみてはどうかと言いたい。
賭けてもいい、1時間半以内にこのクソ馬鹿は起き上がって、糞テレビの前で食べるための食事を用意をしてもええると思いこんでいる。17歳になる男が四六時中、何を見るかと言えばスポンジ・ボブ(アメリカのアニメ)で、このクソ馬鹿はヒトデのパトリックがゲイだとも気づいてない。
「ベッドから出なさい。ベッドメイクするんだから。12時までそこにいて、ベッドもそのままってのは許されないよ」 この怠けもんのクソガキめ。いつまでもベッドでぬくぬくしてるのを見てごらん。自分でベッドメイクをするよう言うことはやめていた。最後に自分でベッドメイクするよう言ったとき、このバカはこう返してきた。「そう熱くならないって、マミー」 わたしが過熱しすぎたラジエーターみたいに言った。キリストの血とソロモンの歌くらいしかこいつを救えるものはない!
犬みたいに疲れた。こいつを見てごらん。バカは昨夜またでかけていった。毎晩友だちと連れだって出かけていく。わたしが苦労して稼いだ金でパーティに行き、で、次の日は使いものにならない。よくよくこいつを見てほしい。
2週間前、警察が電話をかけてきた、真夜中にだよ。パーティ帰りのクソガキが運転する車を警察がとめた。このわたしは真夜中の1時に電話を受けたんだよ!
あいも変わらずうちのクソガキと役立たずの友だちのオマールのせいだった。あのオマールというガキはもう一つの受難。ミズ・ベスの余分な足指みたいに、あの子はいつも場違いだ。マンゴーを一つ食べ終える前に、新しいのを食べはじめる。何ヶ月か前にあのアホがわたしに言ったことを覚えてる。
「ミズ・カーペンター、あんたの娘と出かけていいかな?」 ジャクリーンをこいつといっしょに出かけさせるって? うちに来るたびに同じことを言ってくる、娘と出かけさせてくれ。娘といっしょのところを見たいもんだ。このアホが! しょーもない女と結婚するまで、このアホどもは自分の尻尾をおいまわす。うちの娘がどんだけ怠けもんか、こいつは知らない。水が自然にお湯になるのをどれだけ待てるか、ぜひとも見てみたいもんだ。
この娘というのがまたクソガキだった。正真正銘受難の元。アホでアホなガキはわたしが昨日生まれたと思ってる。先週金曜にわたしの車を一日中乗りまわして言うことには、怠け者ナディーンのところに行ってただけだと。美容師で食っていくつもりと言ってる娘だ。うちのクソ娘はいっぱいにしてあったガソリンを空にして戻ってきて、補充しておこうという常識さえ持ち合わせてない。頭の白い年寄りと会ってることをわたしが知らないと思ってんのかい。あのバカがばあさんになるまでこの家に居座るつもりなら、どんな目に会うか考えろってこと。
3人のクソガキの始末をどうつけるかは、神のみぞ知る。おや、またしてもこれだ。神様、なんとかしてほしい。あのクソニッガ、綿菓子を食べてベッドによだれを垂らしたな。
話を戻すと、あのクソガキは警察に電話をかけさせた。「ダピーってのは誰を脅すべきか知ってる」とみんなは言う。ダピーと同じで、クソッタレ警察は、血圧が高いのを知ってて夜中の1時にわたしに電話してくる。
「カーペンター夫人」と警察、わたしが夫持ちと思ってる。
「そうです、わたしです」 なんでこのわたしが、警官にちゃんとしゃべらなきゃいけないのか、よくわからない。警官に口をきく前に、心の中でこう言う。「神様、あなたはわたしの支えです、救世主です」 それからあいつに何があったか訊ねた。警官が言うには、トニーは車を仮免許で運転していた、運転ができる同乗者もなく、あんな夜遅くに仮免許での運転は許されない、と。
わたしはベッドから出ると、レッド・ヒルズ・ロードを運転して警察まで行った。グリーナー新聞で誰かが書いてた言葉を思い出してほしい。「警察が何かしてくれると思うな。そうではなく、自分が警察に何ができるかを考えろ」 わたしが必死で稼いだ7000ドルの賄賂を警官に渡して、うちのクソガキを釈放させねばならないとは! 受難とイライラの種以外のなにものでもない。
さらにひどいことには、その夜、あいつのガールフレンドがこの家で待っていたってこと。あいつがオマールとパーティに行ってるときに、その娘がうちのソファに座って、わたしにトニーがその晩、どこかに連れて行くと約束したと言うのだ。このかわいそうな子にわたしはウソをつくはめになった。約束を忘れて、ちょっとおばさんの家まで行ってるけどすぐに戻ってくるよ、と。クソ息子は毎晩この娘を連れずに出かけていって、なんの伝言も残さない。あいつはしこたま丸パンをこの子にやってる(ジャマイカ流の「だます」という意味)。この子が必要としてるのはチーズのかけらとレモネード一杯分のランチ、それで一息つける。ときどき車を貸してやると、座席の下から使用済みコンドームが出てくる。わたしはあのクソガキに訊ねたことがる。自分を大事にしない安くて役立たずの女の子たちと、わたしの車でセックスしてるのか、と。あいつはこう返してくる。
「ママがなにいってるかわかんねー」
「わたしがなにいってるかわかんないってか? おまえはエンジニアリングを勉強したいんだろ。なのにちゃんとしゃべることさえできないのか?」とわたしは言った。
「座席の下にあったコンドームはいったいなんなの」
「あれはただのゴム風船だよ、ママ。コンドームがどんなものか、知らないだろ。ママの時代にコンドームってあったの?」 まったくこのクソガキはたいしたアホだ。受難の塊にして衝動の化身だ。
話を戻すと、トニーのベッドを整えて部屋を掃除して、それからリビングで座って休もうとしたとき、家の玄関の扉が開いて誰か入ってくる音が聞こえてきた。ジャッキーじゃないことはわかってた。あの子は午後早い時間には帰ってこない。仕事の面接があったから。ということは片目のマージーだ。うちの玄関をノックなしに入ってくる、唯一の図々しいやつだから。思ったとおり、やって来たのはあの女だ。
午後の1時半に、片目のマーガレットが(妹がアメリカから送ってきたという)派手な赤いトラックパンツにブルーのレースとフリル付きブラウスで入ってきた。今日もひどい服にひどい髪型、ひどい化粧に、(賭けてもいい)ひどい口臭。
マージーはやっと、ラバが便秘したみたいな顔つきの役立たずの空ポケット男と別れる決心をしていた。で、マージーは自分でやってかなきゃならない。あのバカ女は、おでこの真ん中から毛がピューッと生えている男を選んでおきながら、その先に起きる問題を予測してなかった。アーメン。
「げんきしてたー? ドレッタ。貧しき人々のために今日はどんな善行をしたの?」 わたしが救世軍のなんかだと思ってるわけじゃなくて、この女は誰にでもこう言ってる。
そんなことを口にしながら、リビングにスイーッと踊るように入ってくると、イースターうさぎのポーチをサイドデーブルに置いた。孫もいないのに、ポーチの中にこれでもかと菓子を入れて歩いてる女を他に知らない。いつもアリがそこにたくさん寄ってくる。キャンディーを入れたまま口を開けてあるからだ。
わたしは挨拶をしたあとで、トラックスーツを着てるのに、なんで1日としてジョギングしたためしがないのか、と訊いてみた。
「これ気に入った?」というのが彼女の答え。「自分の持てるものを利用して働かなくては、それを見せなくちゃ、ね。でなくてどうやって男をつかまえられる?」 わたしは訊ねた。あの最後の男がもちこんだ受難のあとで、まだ男を探してるのか、と。あの女はわたしはまだ若いから、何かしなくちゃホホホ、と答えた。この女は別格だ、そうとしか言いようがない。わたしがこの女のためにやかんを火にかけたかって? いつものように、こいつはお茶と砂糖を持参してる。
「2時には家を出て学校に行かなくちゃ。マージー、知ってるよね」 お天道さんがあるうちに行く場所など金輪際ないけど、この女の前では何か用事をつくっておかないことには。放っておいたら、ちょっとだけが、教会のクリスマスの礼拝くらいに引き延ばされる。マージーみたいにおしゃべりな女には会ったことがない。神様に与えられた毎日をこうしてうちに来ることにつかってる。別に話すこともないのに、習慣のようにやって来る。あの女は気にしてない。
「ブランドはあの娘となにがあったって言ってるの?」 わたしは訊いた。ブランドというのはマージーの一人息子で、セブンスデー・アドベンティスト信者の女の子と出かけていって、本物の信仰を見つけたと言っている。ところがみんなが言うには、 同じ教会の別の女の子のお腹を大きくさせてる。これほどの受難がこの世にあるだろうか?
「あの子が言うにはモナはいっしょにいたいらしい。で、彼女が言うにはうちの子も人間、人間は間違いを犯すってわかってるって。モナの母親が二人に結婚するよう仕掛けてるらしいの」
「その娘は見た目はどうなの? セブンスデー教会には醜い子しか行かないって、教会で男を見つけて大きなリングを得ようって魂胆なんだろう?」
「そうかもしれないけど、鼻は高いんだ」
「じゃあブランドが妊娠させた女の子の方はどうなってるの? それに働いてないブランドは赤んぼうをどうすつもりなんだい?」
「あの子は子どもの世話をする方法を見つけなきゃね。あたしは誰かの子を世話するなんて真っ平。一人子をもったけど、それでたくさん」 というのがマージーの言ったこと。
「まるでその子の親権を申し出ろって、わたしが言われてるみたいだねぇ」とわたし。「父親が間抜けだったら、母親も例外なく間抜けだよ。子どもには何のチャンスもない」と付け加える。
「まあ、あの子とモナが、あるいは赤んぼうの母親がよその教会を見つけなきゃね。この3人が同じ教会に行くのはよくないよ。みんなに何があったかわかってしまうだろ?」
マージーは扇風機の一つを自分の方に向けてくれないかと頼んできた。そうすれば涼しい風が自分にも来ると。まるで自分がこの家に招かれて来たみたいな言いようだ。
マージーが自分のお茶を飲んでいる間、わたしはキッチンで用事を片づけ、布巾を物干しにかけた。リビングに戻ってくると、マージーはさっき以上にゆったりとリラックスして靴を脱ぎ、テレビをつけていた。
「ジャッキーは今日、面接に行ってるんだって聞いたわよ」 2日前にそれを教えたのがこのわたしだってことを忘れてんだろか。
あのおバカな娘が、面接からいつ帰ってくるかわからない時間になった。この8ヶ月の間、ジャッキーは四つもいい仕事にありついていた。いい仕事なのに、そのすべてを失うようなことをした。あんな朝早くに起きれない、上司が嫌い、社員は盗っ人でウソつき、などなど。ああだこうだの連続。わたしは娘に訊ねた。自分の人生をいったいどうしたいのか、と。すると映画スターになりたいって答えた。あの子に神のお恵みを。わたしの年金で面倒みてもらえるなどと思うな!
「そうよ、あの子はもうすぐ戻ってくる。でもわたしは学校に行かなくちゃならないから、家にはいないの」
「今度の面接受かるといいね。弁護士補助要員でしょ、あの会社の、、、ええと名前なんだっけ?」「ヌーネス・アンド・スコールフィールド」とわたし。「レベッカのほうは外国でどうしてるの? 最後に連絡があったのはいつ?」
「あの子は大丈夫。変わらずしっかり働いてるよ。だんなと何かあったみたいだけど、わたしには言わない」
「まだ結婚して1年じゃないの。いったいどんな問題があるんだろうね」
わたしにはわからない、と言ってから、学校に行く用意をしなくちゃならないと告げた。まるで自分の中にクーリーの血が混じってるみたいに感じてた。相手の顔を見ながらウソついてるのだから。トイレに行って水を流して戻ってきてもまだ、マージーはリラックスムードで、うちのテレビでCNNを見ていた。なのでまたあとでね、とわたしは言った。ゆっくり少しずつマージーが帰り支度をはじめた。家から出ていくのに20分以上かかってた! わたしの方は服の着替えも済んで、本当に出かけるみたいな格好だった。
さてマージーが出ていって、わたしは庭仕事用の服に着替えてマンゴーを取りにいった。いつもマンゴーを子どもたちの目から隠す必要があった。子どもたちは家の中でお金を見つけたときやるように、マンゴーも見つければもっていった。わたしはプラスチックの椅子を屋根の上に運んだ。そこで誰にも邪魔されずにマンゴーを食べるのが好きなのだ。家の中で食べれば、部屋にいるトニーが匂いを嗅ぎつけるかもしれないし、ジャッキーももうじき戻ってくる。クソ犬が日向ぼっこでもしているみたいに、屋根の上に陣取っていた。この前屋根に上がってきたとき、この犬はうちの子の靴を噛んでいた。取り上げようとしたら、クソ犬はわたしの手に噛みつかんばかりだった。そしてわたしが侵入者ででもあるかのように唸り声をあげた。こっちはおまえに餌やってるんだよ! このクソ犬が!
というわけで、わたしはイーストインディアン・マンゴー三つにジュリー・マンゴー二つを食べた。それから2時間ほど、あの子のことを腹に溜めながら、暖かな午後の日射しの中で居眠りをした。あの子がこんな風になったのは、誰のせいでもない、わたしのせいだ。