ディスポ人間表紙

15.6 x 1.6 x 23.4 cm、372頁
ペーパーバック版:¥2,268

キンドル版:¥540

ディスポ人間 

 

著者:エゼケル・アラン、日本語訳:だいこくかずえ

 

[この本について]

主人公ケニーの子ども時代(ジャマイカの1970年代、1980年代)は、政治的混乱と経済破綻で、国は沈下の一途をたどっていた。歯止めの効かない貧困、恥の象徴である無学、大人たちの暴力と反モラル、共同体を不吉におおう迷信や呪術、、、そんな「クソ忌々しい村」をいつか出てやる、とケニーは心に誓う。子ども時代の鮮烈な出来事の数々と、国を出てビジネス・コンサルタントとなったケニーの30年後の回想が、日記、手紙、メール、詩や民話などをまじえて語られていく。実話に近い長編小説。

 

​なんといっても、この小説の面白さと魅力は、主人公ケニーの「くーる」で「馬鹿馬鹿しい」語り口にある。起きていることの極端さ、深刻さ、救いのなさを吹き飛ばす<快筆>が特徴。

[著者について]
エゼケル・アランはジャマイカの作家。1970年生まれ。デビュー小説『Disposable People』で2013年度のコモンウェルス新人文学賞(カリビアン地区)を受賞。職業はビジネス・コンサルタント。

 

2018年10月出版

発行所:葉っぱの坑夫 www.happano.org
ISBN: 978-4-901274-46-3(ペーパーバック)、 978-4-901274-47-0(Kindle)

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『ディスポ人間』ウェブ版(2017年7月 - 2018年6月連載)

 4歳の頃から、両親はときどきぼくを家からしめだすようになった。1970 年代のことで、家といっても、一間だけの「家みたいな」ものでしかなくて、両親と兄とぼくでそこに暮らしてた。妹たちはまだ生まれてなかったけど、ママとパパは家をなんとかしようと、しょっちゅう手を入れていた。
 ぼくと兄さんが家から出されるのは、両親の喧嘩、家での出産、親が急にセックスしたくなったときなど。兄のマーティンはぼくほど気にしてない風だった。ぼくはうんざりだった。
 「なんか他のこと考えろって」 これが兄さんの慰め方。
 家の窓はふつうの窓ガラスで透明なやつ。ちゃんとカーテンがしまってないと(いつものことだけど)、嵐のような喧嘩、死産の場面、ドタバタのセックスシーン、と中で起きていることが丸見えだった。そのときのやんやの大騒ぎ、大音響はいまも耳について離れない。ああもっと強く、ハアハアヒャー、てめえこのやろう、ほらがんばってほら、もう二度となしだからね、あーもうもうもう、、、押し寄せる感情と絶叫のかずかず。

第1章「2.15 a.m. ー 私有財産」より

Kindle版

本の外観(使われている英文の手書き文字とイラストは、著者の手によるものです)

もくじ

第1章 2.15 a.m. ー 私有財産
第2章 2.43 a.m. ー 更生用ムチ
第3章 3.17 a.m. ー 犯罪は報われない
第4章 4.21 a.m. ー 好戦家のマスターベーション
第5章 ぼくのはじまり
第6章 あいつ、きれーな髪してたなぁ
第7章 クッキー
第8章 音楽は甘い、うーん、なんて甘いんだ
第9章 ハエどもの神様
​第10章 ドレッタ・カーペンター
第11章 ガイ
第12章 火
第13章 自分とは
第14章 チビっ子トミー
第15章 会話を探して
第16章 あの夏、鱒ではなくキンメダイに恋をした
第17章 浄化
第18章 パパについて  
第19章 猫たち犬たちの秘密の暮らし
第20章 ゴキブリサイズの人生
​​第21章 断片をつなぎ合わせる
第22章 ママの微笑み
​第23章 マーティンと兄さん

​​第24章 ビヨンセとぼくがいっしょにいないわけ

第25章 二酸化炭素排出量
第26章 牧師
第27章 世にも奇妙な手品
第28章 憎シミ
第29章 プライドのみなもと
第30章 ガーネット
第31章 感謝をあいつは期待した、そのクソ神経、理解できるか?
​第32章 サイン、コサイン、タンジェント
第33章 死への願望
第34章 葉っぱをやめた日
第35章 つま先ほどの雑多なこと
第36章 犬が死んでいくのを見る(1)
第37章 犬が死んでいくのを見る(2)
第38章 ぼくはずっと作家になりたかった
第39章 ブッシュピープル
第40章 股間とまんこの土地   
第41章 邪悪な霊
第42章 聖なる霊
​​第43章 皆が言うには
第44章 ぼくとセミコロン
​第45章 子ども時代の墓地、もう恐くはない
謝辞