Pigeon Morning, photo by ZeroOne, CC BY-SA 2.0
夜あけの ソーホー
ハトの王国
夕べの ざんがい
Soho sunrise:
pigeons reign
over unswept streets
イースト・ニューヨークの朝
お日さまと サルサが
ぼくの へやに ながれこむ
East New York morning:
sunshine and salsa
flood my apartment
タクシーで
消されてしまった
好きな うた
the taxi driver
turns off
my favorite song
風 かわる
うら階段
ピザの においが チャーメンに
on the fire escape
the breeze shifts direction
from pizza to chow mein
突風ひとつ
きのうの見出しが
飛びさる 街かど
a sudden gust -
yesterday's headline
crosses the street
トランププラザの
影に
ダンボールハウス
in the shadow
of Trump Plaza
a cardboard house
やさしい 風と あるく 道
わたるたび
みどりの 信号 合図する
gentle sidewalk breeze
every time
the light turns green
セミたちも
鳴きごえ とめる
消防車
even the cicadas
stop
for the fire truck
ニュースを 聞くたび
生きてることに
感謝する
listening to the News
I feel guilty
for being alive
アダルト系本屋さん
で、ホッとひと息
教会の われ鐘から のがれて
adult book store
a refuge
from church bells
夜ふけの ペン・ステーション
ひびきわたる足音 影さえも
Pen Station after midnight:
even the shadows have echoes
ひと またたき
ひと すじ 読む
ネオンの ひらめきの下
reading
under the flashing neon light
one line at a time
とりのがす
終電の駅 思い
会社に とどまる
having missed
the last train
fear keeps me company
ポンと あいた まるい穴
ソーホーの 夜に
こはくの 月 のぼる
punching a hole
through the Soho night -
amber moon
ポール・ディヴィッド・メナ「ニューヨーク、アパアト暮らし」(2001年、2012年新版)より
ポール・ディヴィッド・メナ
ニューヨークのロックヴィルセンターで生まれ、子供時代をロングアイランド郊外で過ごす。高校時代から詩を書いていた。ハイク・アンソロジーの本と出会い、俳句という簡潔にして厳格な様式に惹かれるようになる。以来、俳句を書いて日刊紙や雑誌で発表してきた。「ニューヨーク、アパアト暮らし」(原題:tenement landscapes)は1995年に出版された最初の詩集である。