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Artwork  by Mugi Takei

教室

連載詩『教室』より

井上洋子

ある日
ミナは教室を産んだ
ミナは
隣の女の産んだ教室が気になりはじめた
ある夜
ミナは自分の教室と隣の女の教室を比べはじめる
すると
世界も
宇宙も
ふたつの教室を比べているにちがいないとミナは思いはじめる
ミナは何度も隣の女の教室をのぞきに行く
行くたび
隣の女の教室がすぐれていることがわかりはじめる
ミナは自分の教室を折檻して殺してしまった
ミナは自分の殺した教室を土に穴をほって埋めた
翌日
掘り出しては死んだ教室をながめてから場所を変えて埋めた
翌日
また掘り出しては死んだ教室をながめてから場所を変えて埋めた
ある日とうとう
ミナは自分の死んだ教室を街の「死んだ教室専門店」に二足三文の値で売った
しばらくすると店の主人から電話で
「あなたから買った教室がたいへんだからひきとりにきてほしい」と言った
いったいどういうことかとミナは店に行く
店主は「あなたの教室はまだ生きているじゃないか、これは詐欺だ」とミナに息巻いた
なるほど、死んだはずの教室に真っ赤な芥子の花が咲き
芥子はミナの教室を這い出て店中に広がりはじめていた
ミナは記憶にない記憶が見えた
小さい頃に自分は父親の部屋で芥子の種を口につまんだのだと
ミナは店主に一言詫びると教室を持って店を出たが
橋まで来ると芥子まみれの教室を川へ投げた
教室と真っ赤な芥子の花は川を流れミナから遠ざかる
しばらくして
ミナはふたつめの教室を産んだ

井上洋子について

詩集『教室』 (旧サイトにて『教室』すべての詩をお読みいただけます)

1.教室 2.アタシの半分 3.楽園 4.隕石 5.姉妹

井上洋子 

静岡県生まれ。東京在住。遠州灘の砂浜でよく遊び、テレビっ子だった子ども時代。今一番会いたいのは当時の私です。

詩、絵、写真など掲載の井上洋子のホームページ yoko11.com(現在はない)。

ことばの断片#27に詩「ピクニック」が、#55に訳詩「私たちお墓では遊ばない」(エミリー・ディキンスン)があります。

詩集「Permanent garden」を2005年に出版。

*これは2006年10月掲載当時に書かれたバイオグラフィーです。

Mugi Takei

Mugi Takei(本名 Mugi Salaverry-Takei)。ニューヨーク出身、北カリフォルニア在住。2010年から2013年くらいまでアメリカ横断旅の中毒になり、何度も小型車で旅に出る。2015年女の子を出産。2021年男の子を出産予定。民話、フォークアート、日常生活、夢に触発されながら、女性と自然の深い繋がり を主なテーマに作品を作り続けている。作品は、ペインティング、ドローイング、ストップモーションアニメーション、詩など。

​​Mugi Takei オフィシャルサイト

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