サンクチュアリに住むゾウは現在、メスのゾウのみです。野生のメスのゾウは群れをつくって生活しています。通常一番年上のメスゾウが家母長となって群れを率い、娘や姉妹、青年期前のオスも含めた子どもたちといっしょに暮らします。
群れの中で育つことにより、子どもは社会性を身につけ、将来に備えます。動物園などの飼育環境で育ったゾウは、単独で飼われることも多く、群れを形成することができないため、ゾウとしての社会性を学ぶ機会がありません。群れで暮らした経験があまりないゾウたちが、サンクチュアリに来てからは、仲間をみつけ助け合って楽しく生活しています。
サンクチュアリのQ居住区(隔離エリア)では、仲のいい3人組が2年くらい前からできています。デビー、ミニー、ロニーの3頭は、1日の多くの時間をともに過ごすようになりました。草地や山の斜面、池などに連れだって出かけ、餌探しをしたり遊んだりしています。
世話係のブリアナによれば、この3頭はいまや離れがたい仲になっているとのこと。以前はミニーは、デビーやロニーとは区分されたエリアにいることが多かったそうです。ともに過ごす場所を提供しようと世話係が計画したところ、この3頭は交流を深め、近しい関係をもつようになりました。3頭が一緒にいる様子は、Elecamのライブ映像でもよく捉えられています。
同じQ居住区で暮らすビリーは、はるか遠くの自分の「隠れ家」付近にいることが多かったのですが、最近になってデビー、ミニー、ロニーのエリアのフェンス近くで過ごす姿が見られるようになりました。ビリーは鎖につながれて国じゅうを巡っていたサーカス暮らしの影響で、自分のまわりに他のゾウがいることに恐れや不安をもっていました。世話係は、ビリーが3人組ともっと交流をするよう手助けしたり、応援したりしながら、社会性を身につけられるよう見守っていくと言っています。
4月4日(2017年)のElephant Sanctuaryからのニュースレターには、ビリーがロニーとの仲を深めているという報告がありました。ゾウによっては、他のゾウたちと仲間意識をもてるようになるまでに時間がかかる場合があります。ビリーの場合は、ここに来てから11年の歳月がたっていますが、やっと他のゾウたちと交流する気分が生まれてきたのでしょう。サンクチュアリの敷地は非常に広いため、個々のゾウがいつ、どこで誰と過ごすかを選ぶ自由が保障されています。だからどのゾウも強制されることなく、自分のペースでゆっくりと馴染むことができるのです。
Q居住区:結核の陽性反応があるなど、何らかの身体的問題を抱えているゾウが暮らしているエリアです。
ロニー、デビー、ミニー(左から)