Elephant Stories

サンクチュアリに住むゾウたちの物語

<コラム>

 

Q(隔離)エリア:結核菌をもつゾウたち

飼育環境にいるゾウたちの結核について(2014年10月28日のEleNotesより)

 

USDA(アメリカ合衆国農務省)の規制基準では、飼育環境にいるゾウは年に1回鼻洗浄テストを受けて、結核菌の有無を検査することが義務付けられています。サンクチュアリではこれに加えて、今年初めに、結核菌検出をさらに正確にするための血清による検査をしました。

 

鼻洗浄による結核菌の培養検査では、ゾウが結核菌を活発に発散させているときにのみ陽性反応が出るため、感染があるのに陰性と出てしまう例があります。鼻洗浄はいまも病原菌を見つける検査として広く行なわれていますが、現在の獣医学では、ゾウの結核菌検出に関して、およそ3%程度しか信頼性がないと判断されています。DPP(二重進路法)として知られる、より正確な血清検査がここ5年の間に使えるようになり、90%の検出が可能になりました。

 

「エレファント・サンクチュアリは、ゾウの結核への理解を広めるため、TWRA(テネシー野生生物資源庁)と協働してきました」とTWRAの野生動物飼育担当者は言います。「サンクチュアリーの獣医学及びハズバンダリー・チームは、結核治療管理において成功体験をもっています。それを知ってTWRAは、サンクチュアリーの結核検査やその治療法と出会ったのです」

*ハズバンダリー・ケアとは、ゾウの負担を減らす治療法やからだのケアをいう。

 

サンクチュアリーのアジアゾウ、シシー(当時46歳)とウィンキー(当時48歳)は、結核治療のため、60日間、森と池と草地が広がる16エーカーの「隔離」エリアで過ごしました。そののち、2100エーカーの広々としたアジアゾウ居住区に移り、10月の穏やかな気候の中での日々を過ごしました。 

 

2014年初期に、シシーとウィンキーは、DPP(二重進路法)による血清検査で陽性反応を見せました。これは彼らが生きてきた中のどこかで、結核菌にさらされたことを表しています。この2頭は抗生物質による予防措置を受けており、60日間の治療期間をこの10月に無事終えました。その結果、現在は「治療薬レベル」に達しています。そのレベルに達したことにより、仲間のアジアゾウたちに、潜在性結核菌を移すリスクがなくなりました。

 

シシーもウィンキーも、サンクチュアリーに来てから、鼻洗浄による結核菌の培養検査では陽性反応を見せたことがありませんでした。同じアジアゾウ居住区のミスティ、シャーリー、タラは、変わらずDPP及び鼻洗浄の両方で陽性反応を見せていません。

 

ミスティは2004年にサンクチュアリーに到着したとき、結核菌保持者でした。ミスティは抗生物質による治療を受けたのち、ホーソーン・コーポレーション(動物園やサーカスに動物を提供する代理業)からやって来た8頭のゾウのために2006年につくられた、新しいアジアゾウ地区に無事移動しました。

 

「サンクチュアリーに住むゾウたちは、サーカスや動物園で広範囲の移動をするなど、厳しい暮らしをしてきました。実際のところ、多くのゾウたちについては、その健康の履歴を知っているわけではありません」とサンクチュアリーの獣医監督官スティーブン・スコット(1995年のサンクチュアリー創設以来の獣医)は言います。「ここのゾウたちはそれぞれ異なる背景をもっているので、より正確な判断ができる検査を行なえることはいいことです。これにより健康維持や予防ができ、他のゾウや人間に結核菌を移すリスクもなくなります」

 

シシーとウィンキーはよい健康状態を保っており、アジアゾウ地区の世話係や獣医のスコット、常駐獣医のリディア・ヤングにより、日々観察されています。サンクチュアリーの医療およびハズバンダリーの統合チームは、引き続き、隔離エリアの他のゾウたちと共に、治療薬による副作用が出ていないか(体重の減少もその一つ)、シシーとウィンキーの状態を監視し続けています。

 

産業標準ボディーコンディションの採点では、現在シシーもウィンキーも「理想的」な健康状態と診断されています。抗生物質治療を受ける前の状態から、健康に何ら変化はありません。シシーとウィンキーは、いまも予防薬として抗生物質を毎日とっています。シシーは「おばあちゃんの糖蜜とオーツのミックス」で、ウィンキーは「ピナーツバターと穀類のミックス」で、薬を摂取しています。

ウィンキーとシシー(2015年5月)

Q エリア内のフェーズ1、フェーズ2の分離(2014年11月22日のEleNotesより)

デビー、フリーダ、ロニー、リズ、ミニー(左から) 隔離エリア・フェーズ2の分離フェンス越しに再会する。

これまで隔離エリアはフェーズ1とフェーズ2、二つの分離された居住区(ゾウ舎と自然環境)により構成されていました。フェーズ1にはフリーダ、ビリー、リズが、フェーズ2にはデビー、ロニー、ミニーがというように分かれて暮らしていました。

 

2006年前半に何頭かのゾウたちが到着したとき、サーカスでの生活の間に結核菌保持者となっていることが判明しました。リズは陽性反応を示し、鼻洗浄テストによって結核菌の発散があることがわかり、サンクチュアリーは隔離エリアのフェーズ1に移すことにしました。長年ともに暮らしてきたトリオを組むビリーとフリーダも、リズとともに移動しました。フェーズ1とフェーズ2の間には、20メートルくらいの緩衝地帯があります。

ホーソーンからやって来たゾウたち(2006年)

サンクチュアリーの20年の歴史の中で、結核治療は新たな課題ではありません。2004年に到着したロタとミスティ(どちらもホーソーンからやって来た)も、結核菌の陽性反応がありました。ロタはサンクチュアリー到着後2ヶ月で死亡し、ミスティは隔離エリアでの治療を2006年に終え、ホーソーンのゾウたちのためにつくられた新しいアジアゾウ居住区に移動しました。ミスティはその後、すべての結核菌テストで陰性の反応を見せています。

 

ビリー、リズ、フリーダが隔離エリアのフェーズ1にいる間に、治療チームは、ゾウにおける結核の病状やその治療法についての知見と情報を多く手にしました。この年(2014年)の11月には、隔離エリアにいるすべてのゾウたち(リズ、ビリー、フリーダ、デビー、ロニー)に、結核菌をばらまいたり、結核の症状を見せたりすることが最小限に抑えられているという、治療による大きな改善が見られました。それによりフェーズ2でのゾウたちの合流が可能になりました。

 

この記念すべき金曜日、フリーダはお気に入りの草地からフェーズ2のところまで、先導役として、新たにつくられた歩道を歩いていきました。ホーソーンからやって来た6頭のゾウたちは、声をあげたり臭いを感じたりするだけではなく、同じエリア内で互いに触れ合って交流し、社会化を進めることができるようになりました。フリーダはフェーズ2までの歩行ののち、フェーズ2のゾウ舎に向かい、初めてそこに入りました。リズがそのあとに続き、ビリーもそのあとを追いおずおずと(生活の中の新しいことに対して、今も不安を見せている)ゾウ舎に入っていきました。

 

その晩、そしてそれからずっと、6頭のゾウたちは、暖房付きのゾウ舎でともに夜を過ごすようになります。ゾウ舎は他のゾウの安息を邪魔しないよう、1頭ずつ過ごせる仕切りがつくられています。ゾウ舎では交流も自由にでき、また自分の安息も守れます。敷地の中にある仕切りフェンスも同じ目的のためにつくられています。