外国語辞書を選ぶ、買う、遊ぶ

プログレッシブスペイン語辞典(2000年)
EX-word電子辞書(2007年)
リーダーズスペシャルセット(2005年)


今年の初めに辞書を三つほど買った。一つは英和・和英のパソコン用ソフト、二つ目は紙の西和辞典、三つ目は電子辞書でこれは英語辞書として購入したが、日本語や漢字の辞書などいろいろ入っていた。合計で4万円ちょっと。辞書はめったに買わないものだけれど、買うとなると高価なものだ。でもそれなりに書評なども見て(amazonには購入者のレビューが多数載っている)、いろいろ見て選んで決心して買ったものだから、手にしたときは嬉しく豊かな気持ちになった。
もともと辞書はわりに好きで、広告の仕事をしていたこともあり(ネーミングのときなどに活躍する)、それなりにいろいろなものを持っている。ラテン語、ヨーロッパ語系のもの以外にも、ハワイ語、ヨルバ語、外国語ではないが古語辞典、漢字辞典、カタカナ語辞典などもある。辞書にも良し悪しや相性があるし、10年、20年単位くらいである程度古くもなっていくのではないか。また出版社も記述法や文字の大きさなどいろいろ工夫を加えて、改良を重ねているようだ。
今回、スペイン語辞典が欲しいと思ったときに、実は西和辞典、和西辞典の古いものは書棚にあった。が、amazonで辞書を探しているときに、なかなか良さそうな、そして評判のいい初心者用のものを見つけて、その辞書が欲しくなってしまった(プログレッシブ スペイン語辞典 第2版)。いい辞書を買う/持つ、というのはなかなか気分のいいものなのだ。レビューを見て要所要所は判断できたけれど、やはり紙の辞書の場合、最後は手にとって見たい。文字の配列や大きさ、検索語の見つけやさすさなど、素早く引けることは大切だ。それとこの辞書と同じ系列のポケット版もあって、どちらにすべきか迷ってもいた。それで都内の大きめの書店で探すことにした。辞書などどこにでもあると思われるかもしれないが、これがそうでもない。そのとき気づいたのだが、(日本では)外国語の中でどうもスペイン語はあまり人気がないようで、フランス語やドイツ語の棚は充実していても、スペイン語の辞書は選べるほど置いてないところも多かった。大型書店の話である。ちょっと意外な発見だった。
またブックファーストのような書店では、辞書のコーナーより、○○語会話のようなタイトルの旅行会話などにポイントを置いた、イラスト入り外国語学習入門本のコーナーの方がずっと充実していて、なるほどと思った。今の外国語学習の傾向なのだろう。
最終的に、紀伊国屋新宿南店で探していたものを見つけて購入した。ポケット版ではなく、スペイン語辞典の方である。この辞書はいろいろいいところがあるが、わたしが気に入ったのは、次の3点。重要語句が茶色の文字で少し大きく表示されていて見つけやすいこと、そして重要語句については対応する英語が示されていること、すべての語句の発音記号の後ろにカタカナ表記があること。見開き2ページ内の茶色の文字は2、3個から多くて数個。入門者が探す語句はたいていこの中にある。だから行き当たるのも早い。英語で対応する語句が書いてあること、これが想像していた以上にためになる。たとえば、paraというよく使われる前置詞があるが、「…のために(の)、…するために」という日本語に加えて、「英for, in order to」という記述がある。あるいはスペイン語のウェブサイトの検索ボックスの横に見られるbuscarという言葉。「探す、求める」という日本語とともに「look for」と書いてある。これによりどのような方向性や範囲のことを言っているのか理解する助けになる。三つ目のカタカナ表記は、なくてもよさそうなものだけれど、あることで何となく安心する。スペイン語は比較的発音がわかりやすい言葉だと思うが、同時にカタカナで表わしやすい言葉でもある。またスペイン語は映画などのモノローグが美しいように、口に出して言ってみるのが楽しい言葉。わたしはグロリア・アンサルドゥーアのSpanglish(スペイン語と英語の混じり合った言葉)で書かれた本を読むために、この辞書を買った。さらにアンサルドゥーアの英西バイリンガルの絵本を読むときも活用している。辞書が良いと、言葉を引くこと自体が楽しくなってくる。
それともう一つ。買ってから気づいたのだが、この辞書の編集委員の中にガルシア・マルケスやボルヘスの翻訳で著名な鼓直さんの名前を見つけた。「はじめに」も鼓さんが書いている。こんな小さな発見も、広大なスペイン語世界の入り口に立つ者の励ましになる。
電子辞書は、ここ数年使っていたSonyのごく小さなものが電源が入らなくなったため買った。調子が悪くなってから半年くらいは電池を出し入れしたり、ボディを振ったりしてのショック療法(?)で騙しだまし使っていたが、最後にはまったく反応しなくなった。買うにあたってまず、どんなものが出ているのかざっと知るためにamazonを見てまわった。前任のSonyの辞書にはジーニアスの英和、和英のみが入っていた。当時で2万円台だったと思う。今回はせっかくだからインストールされている辞書にもこだわろうと思った。たまたまパソコン用辞書として評判の高い「リーダーズ+プラス」を購入したところだったので、同じものが入っているものに目星をつけた(EX-word XD-SW9100/カシオ)。amazonで買うと定価5万ちょっとのものが、半額以下の2万円台。しかも辞書類は、他にロングマンの英英、ジーニアス英和、プログレッシブ和英、大辞泉、漢字源と数種入っていて、英語音声、バックライト、手描きパネル付き。実際にはリーダーズとロングマンを使うことが多く、それ以外はあまり使わないけれどでもあればあったで便利ではある。
ほぼエクスワードに決めていたが、これも手にとって見ることにした。どこに行けばあるのか。まず近くのイトーヨーカードの家電売り場に行ってみた。シャープのものが多かったように思うが、どれも電源が入っていなくて試すこともできない。数千円から数万円までのものが並んでいたけれど、なぜかPOPには中身の辞書についての記述はなく、機材の性能についてばかり。買う気が失せた。というか、これでは選べない。それで隣の有隣堂を覗いてみた。さすが本屋である。中身の辞書で選ばれた商品が並んでいるようで、日英以外に、韓国語、中国語の辞書もあった。機材は電化製品でも、辞書は本屋で買うものなのだろうか(ヨドバシなどの大型店は事情が違うだろうが)。そして目指すエクスワードSW9100を見つけ、試してみた。悪くない。が、値段的に高かったので、最初の予定通りamazonで買うことにした。購入してから2、3ヶ月たつがとても重宝している。紙の本や資料類を読むときなど、ほぼ毎日使っている。ホワイトのボディは軽く、薄く、見た目もおしゃれ。出かけるとき本のかわりに持って出ても、英英であれこれ引いたり、用例を見たり、時間づぶしに使える。「とっさの英会話」「TOEICテスト」「経済・ビジネス用語辞典」「パソコン用語辞典」なんていうのもあって、待ち時間1時間くらいは楽々消費できそうだ。実際、辞書というのは必要に応じて使うわけだが、今の性能、機能のものは遊び道具にも充分なる。
最後にパソコン用の辞書について少し。今回購入したのは、研究社の「リーダーズ+プラス」を使用した、「リーダーズスペシャルセット」(ロゴヴィスタ)というのもの。リーダーズは翻訳者の人たちがあちらこちらで誉めている辞書で、いつか使ってみたいと思っていた。これを買うまではランダムハウス英語辞典とShastaというパソコン用英語辞書。それとウェブ辞書をいくつか(スペースアルクなど/英辞郎はどんな言葉でも載っている、という人もいる)。また辞書ではないが、Googleの検索ボックスにワードを放り込んでみることもある。Shastaは知らない人も多いと思うが、パソコン用の辞書のハシリでもうかれこれ10年以上使っている。語彙、用例などは少ないが、軽くスピーディーで、何よりテキストをマーキングしてそこから直接辞書にアクセスできるところが、当時他にはない機能だった(今も同じ性能のものはないと思う)。また辞書への単語登録機能があるので、生物や科学、医療関係などの学者や医者が自分用に登録した単語帳を、ネット上で公開していた。それをダウンロードして、自分のShastaに一括登録すれば共有できるというところもよかった。ただこれはMac版のみで、OS9以前のプラットフォームにしか対応していなくて、いつ頃だったか、開発も販売もやめてしまった。ランダムハウスもOS9対応なので、わたしはクラシックのプラットフォームを立ち上げて、この二つの辞書を使用してきた。
リーダーズについては、ときどきおおっと思うところもあるが、基本的にはランダムハウスとそれほど大きく違うようには(まだ)思えない。もっと使い込むと、良さがわかってくるのかもしれないが。ただこれはOSX用ソフトだからずっと安心して使えるし、ときどきネットからのアップデートもあって常に新しいものが使えるようになっている(のだと思う)。Wordへの組み込みも可能なので、そのように使用してはいるけれど、検索後のファイルと辞書の行き来は今一つだと思う。辞書が自動で前面に出てこないのだ。これはリーダーズの問題というよりは、ソフトを制作しているロゴヴィスタの問題だけれど。このあたりもShastaの方が性能的に優れている。またShastaでは検索語の語尾をテキストのまま入れても(名詞の複数形など)、ちゃんと原形にして表示してくれる。リーダーズでは検索語該当なし、になってしまう。マーキング+検索語表示、という流れを成立させるために本当はぜひとも必要な機能なのだが。
以前から辞書のレビューを書いてみたいと思っていた。三つも、しかも全く違う機能、使用法のものをいっぺんに買ったので試しに書いてみたけれど、もっと違う書き方もあるかもしれない。辞書を使っているときの楽しさを、対象の原文テキストを紹介しながら、それを購読しながら、書く方法もあるか。アンサルドゥーアあたりで、いつかやってみたい。
2008年3月16日(日)17時
大黒和恵・editor@happano.org


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